(チャルメラの音、響く)
「ええ、毎度おなじみ、くず屋でございます。古い青春、いらない青春、ございましたら、お気軽に」
「こんなのでもいいかい?」
「へえ、もちろんで。さて、これは、なんでございましょうな?」
「これ、「誰かが見落とした正義」なんだけどどうだろう。そこの川原で拾ったんだ」
「ようがす。三十円で買わせていただきましょう」
「エッ! そりゃないよもっとベンキョーしてよ、だって正義だよ、見落とされていたとはいえ」
「お客さん、このご時世じゃねえ、正義なんて流行らねえんでございますよ。しかもこいつは見落とされたもんでしょう? まあがんばって五十円、そこらが限界ですな」
「・・・わかったよ。どうせ拾ったものだしな」
こうしてちり紙交換人の手で拾われた正義は買い手もつかず使い手もなかったからそのまま焼却炉行き。